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2020/02/26

「人を手段化しない」というお話を聴く〈焼津市〉

 東京国分寺市にあるお客さんの絶えない人気カフェ、「クルミドコーヒー」の店主・影山知明さんによる、「人を手段化しないまちづくりの考え方」というテーマの講演会が令和2年2月10日にあると知り、お話を聴いてきました。
 これは焼津市市民活動交流センター主催で、まちづくりや市民活動に取り組む人たちに向けたものでしたが、自分の持っているものや時間の使い方を模索していたり、地域のために様々な活動をされているシニアの皆さんにも参考になるかと思いましたのでお伝えします。

クルミドコーヒー店主 影山知明氏クルミドコーヒー店主 影山知明氏


 影山さんは空き家になったご実家を建て替えるにあたり、地域にとって意味ある存在のものにしたいと、多世代型のシェアハウスを建設。そしてその一階に、町に開いたお座敷のようなものをと喫茶店を開きます。始めから喫茶店という考えがあったわけではなく、相談していた方と話す中で、自分の好きな物がレストランで出るようなものではなく、ナッツやトウモロコシのようなものだったと気付いたことから、クルミをメニューのシンボルにおいたカフェにします。 
 外的な環境分析から導くのではなく、内面の好きなものを芯にしたお店ができたのは、相談できた人がいたから。何かを始める時には一人ではなく、三人寄れば文殊の知恵といわれる様に仲間がいるのが良い。一人の考えには限りもあり、気分の浮き沈みもカバーできる。  「好き」から始まっていればブレることがないので、自分の中にある「好き」の種を見つけてスタートし、育てていくのがよいと実感しているそうです。
  
 


 3年目には事業計画(売り上げ目標等)に沿って運営していくことに疑問を感じ、目の前の仕事に忠実に向き合うことから生まれる出会いや発見を大切にする方が良いのでは、と方針を転換します。(もちろん経営者として資金繰りや数字の把握はかなり綿密にし、毎週スタッフ全員で共有するが、数字を目的にはしない)  結果、実際にお客さんと話しをする中で起こる様々な出来事をキャッチでき、そこから新しい広がりがどんどん生まれてきたとのこと。 例えば一人で動き回っている近所の八百屋さんの手助けをする事で、野菜の知識が増えたり、クルミドで作ったお菓子を置いてもらえたり。また元農家の方のアドバイスを頂きながら、スタッフのしてみたかったお米作りが実現し、年ごとに収穫量が増えてきたり・・
 
 成果や理念を目指すことが強すぎてしまうと、できる人は〇できない人は×のような感覚が出てきがちだが、仕事ありきでそこに人をつけるのではなく、蒔かれた種が良い土と環境があって芽を出すように、それぞれの人に合った仕事をつけ、それが育つよう生命的なアプローチをする方が良いと思うようになった。それは人を手段化しないということ。 

 まちづくり等でも「良いまち(団体)を作るためにはどうしたらいいか」で始まると人を手段化することになる。輪を重ねるようにまちの中に重なりを作っていけると、一人ではできなかったことができるようになる。ウィンウィンの関係という言葉があるが、それは「お互いを利用し合い、利害が合わなくなれば縁が切れる関係」ということなのであまり好きではない。それよりも互いを活かしあうgiveの気持ちから入った相互支援的なかかわりが良い。
 
 今「公・共・私」の「共」の部分が失われていると感じる。何かあったら「私」の責任で何とか解決させ、それが無理なものは税金を使って「公」に担ってもらう、という考えが主になっているが、どちらにも負担が大きい。共(助け合い)があれば、独り暮らしの高齢者も子育ても仕事の場面でも豊かに暮らせる。他力本願という言葉も「共」に近いと考える。一人で何でもできると思うな、という戒めと共に、人を頼ってもよいという言葉でもあり、同時に自力本願(一人になってもやりきるという覚悟を持つ)という言葉とセットでもある。 


 
 ・・・始めはテーマに掲げられていた「人の手段化」という言葉が耳慣れず、具体的にどういうことなのだろうと思いながらお聴きしました。地方は都会より「共」の意識は高い様に思いますが、影山さんたちの活動の「共」の部分に、とても魅力的な仕掛けが凝らされている実例も伺い、やはり何事にも「面白い」「楽しい」「嬉しい」をどれだけ感じられ、感じさせるかは必要!と思えました。
 
 皆さんの中にも、関わる団体や地域の自治会・町内会等の活動に、新しい視点を取り入れたいと考える方もいらっしゃるでしょう。これまでの常識感覚や、目標に目が向き過ぎてしまうこと、自己責任を強く求めてしまうことなどから、少し価値観を転換してみようというお話で、新しい環境作りを模索されている方に向けたヒントが散りばめられていたように思います。

 最近焼津市駅前通り商店街の空き店舗を使ってできた「さんかく」という図書館には、今回のお話の内容を詳しく綴った影山知明氏の著書「ゆっくり、いそげ」「続・ゆっくり、いそげ」の本が置いてあるそうです。後者の本は県内で唯一こちらで買うこともできるそうなので、内容に興味を持たれたらこの図書館を訪ねてみるのもいいですね。

志太榛北地区担当特派員   増田昌江 

 


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